果実加工関連産業

現在、ジュースや醸造(ワイン・日本酒・ビール・焼酎など)関連の研究機関ではマレイン酸、
グルコース/果糖(フルクトース)、酢酸、クエン酸など、代謝をつかさどる物質の検出や測定に
酵素法を用いた分析法を採用しています。

その主な理由は、製品の製造から貯蔵、出荷に至るまでの全ての工程で想起できる僅かな製品変化を監視し、
見逃すことなく制御できることにあります。

これらの目的に合わせキット化した酵素法による分析は、熟練した分析技術が不要で、
しかも正確で定量性の高い結果が得られます。

酵素は極めて特異的な試薬として知られ、それ故に非常に正確な結果が得られます。
サンプルとなるジュース中でその他の構成成分や添加物、例えば酸化防止剤や防腐剤には反応しません。

したがって、ほとんどのジュースやワインなどは前処理を省いて、そのまま分析ができます。

生体中および食品中の物質分析の意義

  • 自然のままの物質を正確に同定しモニタリングする。
  • 純度コントロール
  • 衛生状態のモニタリング
    (最終製品中における微生物の変性分析)
  • 栄養状態パラメーターの分析
  • レシピの調和モニタリング
  • 公定法の規定
  • 品質管理


ジュースの成分組成

すでに明らかにされている様にジュースの主成分は、ほとんどが水でその割合は
フルーツジュースで82~90%、野菜ジュースでは 85~95 %を占めています。

炭水化物として主にショ糖、果糖(フルクトース)とグルコースが主成分で、
フルーツジュースは10~16%、野菜ジュースは2~10%、果実ジュース(りんごや梨)には
ソルビトールが0.5~3%の相当量を含んでいます。

酸の量は糖との適度なバランスにより味を決める重要な役割を果たしています。
糖と酸の比率は通常12:1ぐらいが適当とされます。りんごや梨はリンゴ酸が最も多く含まれています。
イチゴなどは主要な酸としてクエン酸が含まれています。
ぶどう類にはコハク酸が多く含まれています。

衛生状態が悪いと果実ジュース中の乳酸がバクテリアにより生成します。
野菜ジュース中の糖も発酵して乳酸を生みだします。

適正に貯蔵された原料から製造されるジュースは揮発性の酸(酢酸、蟻酸)やアルコールはほとんど存在しません。
したがって乳酸が多く検出されるときは果実の保存や工程中の衛生状態になんらかの異変があったと予想されます。

アスコルビン酸(ビタミンC)濃度は保存中に16%まで低下することがあります。
残留亜硫酸塩の濃度は10mg/Lが上限とされています。
亜硝酸は果実や野菜ジュース中にはまれですが、葉野菜やルバーブ(ダイオウ)中には亜硝酸が含まれています。

本物のフルーツジュース?

オレンジジュースなどは、製造規格で要求される最低の糖濃度まで単純に水で薄め、
増量することは考えられます。

よりまぎらわしい手法として、薄めたジュースに本来製品の組成レベルまで糖と酸を加え、
つじつまを合せることもあります。
この様な製品の成分を酵素法で分析し自然品と合致するかを見て本物であるかどうかを見つけることができます。

リンゴ酸はジュースに含まれる本来の成分です。
天然ジュースに含まれるものはほとんどL-リンゴ酸だけで、D-リンゴ酸は天然には極微量しか含まれません。

リンゴ酸は清涼飲料などに添加することは認められていますが、
添加物としては通常D-およびL-異性体の混合物(ラセミ体)が使用されます。
これらを添加物として使用された場合は、製品ラベルにその旨明記する必要があります。

オレンジジュース中に含まれる主な糖の種類はグルコース、果糖(フルクトース)とショ糖でその割合は 1:2:2 です。
オレンジジュースを薄めるためにショ糖を添加した最終製品は糖の比率が本来の製品に比べ変化することになります。

酵素法による果実ジュースの分析

製品番号 製品名 参考法 摘要
糖質
716251 D-グルコース IFU 55,
ISO 13965,
EN 1140,
AOAC
D-グルコースは果実に普遍的に含まれます。
濃度はオレンジジュースで20-50g/L、
リンゴジュースで14-35g/Lです。(AIJN)
139106 D-グルコース
果糖(D-フルクトース)
IFU 55,
EN 1140,
AOAC
オレンジジュースの中のフルクトース濃度は通常 20-50g/L、
リンゴジュースは45-85g/Lです。
オレンジジュースはグルコース/フルクトース比はほぼ一定で、
この比が0.85以下になると発酵によるグルコースの分解を
示唆します。
139041 D-グルコース/ショ糖 IFU 56,
EN 12146
オレンジジュース中のスクロース濃度は10-50g/L、
リンゴジュース中では5-30g/Lです。
多くの果実ではそれぞれ一定の糖比を持ち、
砂糖が添加されたか否かを見分ける指標となります。
716260 D-グルコース
果糖(D-フルクトース)
ショ糖
IFU 55/56,
IOCCC,
D,AU,F
ジュース中の最も普遍的な糖はグルコース、フルクトース、
およびスクロース(ショ糖)です。
糖全体の中でスクロースの占める割合は50%以下です。
グルコースの過剰またはフルクトースの割合が高い場合は
オレンジジュースに甘味料の添加が推定されます。
207748 スターチ(でんぷん) ISO 13965,
D,CH
例えばオレンジジュースの無糖抽出液が40g/L以上であれば、
でんぷん水解物などの添加について調べる必要があります。
でんぷんは透明かつ安定なジュースには濁りの原因となります。
一方、濁った飲料物を作るときはでんぷんを入れます。
糖アルコール
176290 エタノール IFU 52,
MEBAK,D,F,
CH
エタノールは果実の熟し度合いを示します。
エタノールは微生物の発酵産物であるためジュース中の濃度は
3g/L以下と決められています。(AIJN)
148270 グリセロール OIV, MEBAK,
IFU 77
グリセロールはボトリチスまたは酵母によって生成します。
濃度は1g/L以下であることとされています。
670057 D-ソルビトール
キシリトール
IFU 62, D D-ソルビトールは木なりの果実に多く含まれます。
赤色のジュースの真偽性、天然の果実がどのくらい含まれているか
を示す指標として使われます。
リンゴジュース中のソルビトールの濃度は2.5-7g/Lです。
有機酸
139068 L-リンゴ酸 AOAC,
IFU 21,
EN 1138
L-リンゴ酸は果実により特定の濃度が存在します。
L-リンゴ酸は果実に存在しその濃度は果実の種類と
熟し度合いにより変ります。
オレンジジュースで0.8-3g/L、リンゴジュースでは
最低でも3g/Lです。
1215558 D-リンゴ酸 IFU 64,
EN 12138
D-リンゴ酸は天然に存在しません。
検出されれば合成のD-/L-リンゴ酸が添加されていることを
示唆します。
139084 L-乳酸 IFU 53,
OIV, D, CH
保存目的でL-乳酸(E270)を5g/Lまでネクターに添加できます。
L-乳酸は発酵によっても生じます。
1112821 D-乳酸/L-乳酸 IFU 53,
ISO 8069,
EN 12631
乳酸の立体特異性測定は酵素法の最も重要な測定の一つです。
乳酸は発酵の指標でもあり、保存のために加えることができます。
許容値は 0.5g/Lです。(AIJN)
148261 酢酸 EN 12632,
IFU 66
果実ジュースに一般的に添加されますが、
一方で微生物の活動も意味します。
正常なフルーツジュースで通常 0.1g/Lの揮発性酸(蟻酸と酢酸)
を含み、揮発性酸の上限値は0.4g/Lとされています。
979732 蟻酸 MEBAK,
D, CH
数種類のバクテリアにより蟻酸を生じます。
また保存料としても使用します。
139076 クエン酸 IFU 22,
EN 1137,
AOAC,
ISO 2963
果実の種類で特定の濃度があります。
熟し度合いで変化します。
典型的な濃度例ではオレンジジュースで6.3-17g/L、
リンゴジュース50-200mg/Lです。
クエン酸は食品添加物(E330)でもありますが添加量は
3g/Lが上限とされています。
176281 コハク酸 D, CH, リンゴでは熟す過程でコハク酸の濃度が下がってくるので
熟し度合いのモニターに使えます。
428191 D-グルコン酸
グルコノラクトン
D, CH,
IFU 76
ボトリチスに罹ったぶどうではD-グルコン酸が上昇します。
グルコン酸の上限としては800mg/Lとされています。
409677 L-アスコルビン酸 MEBAK 新鮮なオレンジジュース中のL-アスコルビン酸の濃度は
通常400-500mg/Lです。
オレンジジュース、リンゴジュースでは最低でも200mg/L
とされています。
アスコルビン酸(E330)は亜硫酸の除去のためなどに
抗酸化剤としても使われます。
414433 D-イソクエン酸 IFU 54,
EN 1139,
D, CH
オレンジジュース中の濃度は通常65-200mg/Lです。
果実の種類により特定の濃度があるため、
クエン酸/イソクエン酸濃度比はジュースの真正物の
管理指標として使われます。
他の物質
725854 亜硫酸 EN 1988,
MEBAK, D
広く、醸造と微生物の制御に利用されます。
ジュース中の許容濃度は10mg/Lとされています。
905658 硝酸 MEBAK, D この濃度が高い場合はジュースに水道水が入ったと推測されます。
ジュース中の上限は5 mg/Lです。(AIJN)
1112732 アンモニア MEBAK アンモニアの分析はアミノ酸分析過程に際し行われます。
ISO, AOAC, IFU, IDF, EBC, EU:参照;酵素法による生物成分の分析および食品分析
OIV:International Wine Office(国際ワイン事務局)
IOCCC:International Office of Cocoa、Chocolate and Sugar Confectionery
(ココア、チョコレート、砂糖菓子国際事務局)
MEBAK:MEBAK Kommision(Mitteleuropaische Brautechnische Analysenkommission-Central
European Brewing Committee for Analysis)(分析に関する中央欧州ビール醸造者委員会)
AIJN:Association of the Industry of Juices and Nectars from Fruits and Vegetables of the European Union
(欧州連合、果実と野菜原料によるジュースおよびネクター製造業協会)
D:ドイツ、AU:オーストラリア、F:フランス、CH:チリ

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