A:
F-キットの多くは 蒸留水を対照として吸光度を測定し、検体を対照にした吸光度測定をしません。
そのため、酵素反応開始前の検体OD値(反応には関係ない検体自身がもつ一定の吸光度値)が高いと、
正確性の低い高OD範囲での測定 または 安全な測定レンジ幅(直線性がある高い正確性の範囲)が
狭い状況で測定を強いられます。
原因として 試料調製後の検体の濁り(懸濁と乳濁)、色(タンパク質などによる紫外部波長を含む:注1)があります。
F-キットでは 反応前と後で(2回以上)吸光度測定を行い、その差のOD値変化量を求めます。
従って 試料自体の吸光度を完全に取り去る必要はありません。
(注1)測定波長と重なる場合は原因となります。
A:
[脱色、除タンパク処理 など行うことが必要かの判断基準]
脱色や除タンパク処理をする必要がない時:(注2)
1. 検体自身の吸光度(OD値)が0.3以下の場合:(注3)
2. 試料を50倍以上希釈した場合
(注2)滅菌や酵素の失活をさせて、長期保存 や、クリープ反応(副反応)を抑える場合は、除タンパク処理が必要です。
(注3)判別のための簡易検査法
検体自身の吸光度値(OD値)を調べるのに、蒸留水を用意します。
キュベットに加える予定の検体量と蒸留水量の全量を約3mlにして定量の条件(対照:水)で測定します。
・OD値0.3以下:脱色、脱タンパク処理が不要
・0.3~0.5:脱色、脱タンパク処理をした方が良好
・0.5以上:脱色、脱タンパク処理をする必要
A:
脱色、除タンパク処理、濁りの除去方法
試料の懸濁:固形物を遠心で沈降させ除去 もしくは タンパクの凝集に付着させ除去します。
試料の乳濁:以下、処理方法の組合せで乳濁をできる限り取ります。
・pH値を変更(主に酸性にする)
・成分分量比を変更
・加熱処理
・強い遠心分離
可視不純物の除去:F-キットでの測定項目物質は低分子です。
低分子色素より高分子色素を吸着する物質(プラスチック系のポリアミドパウダー
またはポリビニールポリピロリドン)を加えて脱色します。
紫外部吸光物質の除去:タンパクなどのアミド結合を有する物質は340nmの波長で吸光があり、
同波長に吸光を有する測定指標物質NADHと重なります。
酵素反応前の検体のOD値が高くなりますので、除タンパクの必要性があります。
除タンパク方法の種類(注4):塩析法(例:Carrez 試薬:注5)
・酸化還元法(例:過塩素酸)
・強酸処理法(例:トリクロル酢酸)
・透過膜法、超遠心分離法、加熱処理法等
測定物質の性質、酵素反応系、検体保存、除蛋白処理時間より方法を検討します。
(注4)除タンパク処理で、脱色や濁りも同時に取れる可能性が高まります。
(注5)Carrez 試薬の組成
Carrez 試薬Ⅰ:3.60gK4[Fe(CN)6]・3H2O/100ml
Carrez 試薬Ⅱ:7.20gZnSO4・7H2O/100ml
A1:日本のカタログの測定回数は、検体の測定回数に合わせた実際の測定で表示しています。
A2:製造元の合併により名称が変わりました。
A3:一般の臨床試薬キットは、“測定項目のみを製品名とする考え方”を採用しています。製造元のロシュ社(ドイツ)ではその方法による表示を採用しましたが、その表示では必ずしも現在の製品の使用目的を正確に反映しないため、各国は“F-kit”や“Test-Combination(TC-)”などをつけた製品名とし、使用形態に即した形で皆様に提供しています。
A5:世界総発売元R-Biopharm GmbHの英文ラベルの11桁の製品番号から頭の“1”と末尾の“035”を除いた番号が日本カタログの製品番号です。